このブログのタイトルって僕が走った道をあなたが知らないだったっけ?
ふと更新しようとしてタイトルをど忘れしました。若年性健忘症ですかねぇ。
九月某日。思い立って遠出をする事にしました。
前日は少なめに夕飯を食べ早めに就寝。早起きして出掛けるぞ!
気合十分。ですがその気合が空回りするのではいつもの事。前日の夜はなんだかお腹が落ち着かない感じ。食べた物が消化できない感覚がありました→結果、早起き失敗。
でも出掛けます。
目的地は高見峠を越えた先。奈良県です。
早朝五時から六時の間に出掛けられたらいいなぁ、とか思っていましたが八時過ぎに出発。
今日は例の峠で水を汲んだりしないので、ボトルにしっかり水を入れていきます。しかも二本! 荷物が少し多いので背負ったバッグには補給食も入れておきました。おかげ重ーい。全然進まないぜ。
というのは勿論言い訳。
はっきり言ってコンディションは良くなかったのです。体調がよろしくない。足が重い。脚が回らない。坂と呼べない坂で息切れ。
自宅から約40km地点の飯高の道の駅で休んで帰ろうかな、走り始めて一時間でそんな考えが脳裏をよぎります。
でも皆に言っちゃったんですよね。俺明日奈良行くんだ、と。行かずに帰ったらなんて言われるだろう。ちょっと考えるだけでぞわぞわしてきます。
こうなったら惰性で走ってくれるわ!
思考と肉体の疲労感を切り離すゾンビ走法であれば、スピードは出ないが前進は可能!
人間やればなんとかなるもので、飯高の道の駅まで無事に到着しました。少しトイレ休憩でリフレッシュし再出発です。
少しは回復しただろう。そんな期待を裏切る我が肉体は相変わらず重かったです。貧弱貧弱!
それにしてもやはり飯高のあたりは景色がきれいです。
疲れた肉体によく効くいい眺めです。清浄な空気が身体にしみわたるようです、癒される! 浄化されるっ!
疲れた体によく効きます。心をへし折る高見峠の高架。
疲れた足によく効きます。高架からの眺めを写真におさめるため、と心の中で言い訳をして脚を止めました。惰弱惰弱!
高架を登ってしまえば斜度も緩やかになって行きます。苦しいですが再スタートです。
登りで苦しくなったら、速く登りたかったらどうすればいいか。
「ショオッ!」って言えばいいしょ。あとバイクを振るっしょ。
しょおおおおっ!
ぐああああああああああ、転倒。
うそです。
トンネルの前で休憩した時の写真が転倒したかのように見えるだけでこけてはいません。
丁度正午になったのでお昼を兼ねて補給食を頂きつつしばらく休憩します。あんぱんうめー。
前回ここへ来た時はトンネルを抜けた先を左へ進み旧道に入りましたが、今回は直進し奈良側へ下っていきます。
ここまでだらだら登り、高架の登りごりごり体力を削られましたが、後は下りでしょう。看板にも「この先10km下り」みたいなこと書いてありました。
実際長い下りでしたが10kmは無かったですね。でも坂を下りが終わると平坦道なので楽ちん。と思いきや、そこは山の多い奈良県。アップダウンが襲いかかってきます。だがしかし、この時コンディションは朝より良くなっていたのです。お昼休憩のおかげでしょうか。
これで坂道なんかこわくねぇ!
坂道の途中で見つけた看板。日本オオカミ最後の地。
これを撮るために足を止めます。疲れたわけじゃないんだからね。
高見峠のように特筆すべき山や坂は無いですが、やはり上りが多い地域です。でも体調回復したから負けない。
長閑な景色が続く良き田舎の風景と言ったところでしょうか。
国道23号線や中勢バイパスなど車の往来が激しい所を走っても、あまり楽しいとは思えない僕ですが、自然がきれいなところを走るのはとても気持ちがいいです。僕のこの気持に共感して頂ける方はきっと奈良県ライドは楽しんで頂けるんじゃないでしょうか。坂道は多いので注意が必要ですが。
気分が乗ってきました。図に乗りたい慢心状態。調子に乗って事故しないように気を付けて走ります。
ええ景色やでー。火の用心、余所見一瞥事故の元ってね。
事故るわっ!
全安通交の字の下はちゃんと交通安全協会、と書かれていたので逆さまになっているのは間違いではないようです。あえて字を逆さにすることで気を引き注意を促す、という意図があるのでしょうか。
僕はじっと凝視しちゃいました。これスピード出ていたらかえって危ない気がします。
誰だ、ここを長閑で静観な美しい良い田舎と言ったのは。
そうではありません。気を抜けば思いがけない精神攻撃が襲いかかるエキサイティングな地域です。
一瞬の油断が落車を招くのはどこでも一緒なのですね。
そこからしばらく進むと吉野に入ります。信号待ちで大台ケ原ヒルクライムのポスターを見かけました。吉野神宮の案内看板があったりと心躍ります。
興味はあるのですがあまり時間に余裕が無いので今回は見送ります。
ここまで来たら目的地はもうすぐ。
今回の目的地は奈良県高市郡高取町の高取城です。
また城かよと思った方、また城なんだよ。
途中で少し迷子になりつつもひとまず、最寄駅の壺阪山駅に到着。街並みを見つつ散策するのに、まずこの駅を観光のスタート地点にします。
駅近くの辻から路地へ進むと古い街並みに入ります。その道沿いに観光協会の建物である夢創舘があります。夢想ではなく夢を創る舘。すごく夢のある名前だと思います。
100名城スタンプはこの夢創舘に設置されているそうなのでスタンプを押して情報収集です。
まず、これが見たい。
空き缶で作られた高取城。後ろのテントと見比べるとその大きさが分かりますね。
三万五千個以上のアルミ缶で出来ておりアルミ缶を使用したオブジェとして個数世界一で2012年にはギネスに認定されたそうです。
これだけ大きく目立つ缶はどこに。通り過ぎていたとしたら僕の目は節穴だなぁ。
この缶城はどこにあるのか訊いてみると……
撤去されました。
何だとぉッ!?
本日一番衝撃的な出来事でした。
何でも設置されていた土地が売られてしまったそうです。無い物は探しても無いので仕方が有りません。
お城までの道のりを聞き資料を頂いて、再び出発します。
路地にあった高取城のCG再現図。ロマンをありがとう、奈良産業大学さん。
高取城までは登山道を通るルートと車で近くまで行くルートがあるようです。夢創舘では車と同じ道をお勧めされました。そりゃあ自転車だもの。ピチピチタイツ姿が登山に向いてるとは思えないでしょうし。靴もSPDシューズとは言えロードツーリングモデルであってMTB用でも無いのでお勧めされた道を行くことにします。
先程体調は良くなってきたと言いました。でも体力は底を尽きかけています。
高取城付近まで舗装された山道を登っていきます。夢創舘から6kmほどなのですが、疲れた体によく効きます。
しんどーい。
脚おわちまったしょ。
でも辛い道のりも眺めがよければ楽しいものでもあります。
途中にある壺阪寺という寺院が見えたり、
いくつかある登山道に入ってみたり。
登山道にある五百羅漢像の一部、たくさんの石仏さんに出会えます。
そして登山道に入ったために更に消耗する肉体。歩くのは得意。一緒に旅行した知人が足の裏に豆や水ぶくれが出来てもなんともないこの足ですが、さすがに辛いぞ。残り3kmがものすごく長く感じられました。
が、無事到着。
高取城の入り口。ここから本丸まで500m程の道のりだそうです。
本当に山道の中にお城の遺構が残っています。
この高取城、日本三大山城の一つです。
他の二つは岐阜県の美濃岩村城、岡山県の備中松山城です。
上記の二つに関しても行った事は無いのですが、資料を見ているとどれも壮麗なお城です。
美濃岩村城は三つのお城の中で最も標高が高く、松山城は城郭建築物としては一番高い位置にあるそうです。高取城は比高が三つの城の中でも一番高いという特徴があります。
比高ってなんぞや。一言で言うと高低差の事です。
崖や盛り土の高さと近くの平坦な地形との高低差の事です。これが高いと当然高低差が大きくなるので堅牢な城だという事が出来ます。
美濃城は海抜約700mほどだそうですが、比高は150m。
対して高取城は海抜580mで、比高は390m。
もちろん比高が低くても急峻な山に立っていればかなりの防御力ですし、逆に比高が高くても比較的なだらかな山であれば防御力は低くなりがちでしょう。ですので一概にこの比高だけで城を評価するのは難しいですが、それでも比高が高いというのは重要な評価点です。
そして山城であるというのもまたいいですね。
城という字は土から成ると書きます。そういう意味ではまさに城そのものと言えそうです。尤も、高取城に関しては1300年代の南北朝に築城された城ですが、戦国時代に近世城郭として改修され立派な石垣や天守閣(今はもうありませんが)もあったので山城らしい城であると同時に、近世城郭でもあるわけですね。
おおう、二つの城の特徴を持ったお城ってお得じゃないですか。
100名城に選ばれるわけですよ。
観光客で賑わっていそう。なのだけど、この日は誰ともすれ違いませんでした。おっきな山城に自分ひとり。さ、寂しくなんかねぇし! むしろお城独り占めで気分いいし! 気分はさながら城主だし!
でもやっぱりちょっとさびしかったり。山の中だし動物とか出てこないかな。リスとかキツネとか、マダニの宝庫である鹿様とか。
と思ったら、出たー! 熊様だ! 助けてアシリパさん。
びびって思わず写真もぶれます。
熊様が高取城本丸の案内持ってます。そんなもので油断を誘うなど笑止千万。俺の愛読書はゴールデンカムイ。ジビエにしてやるぞ。魂が勃起する!
なんだ、人形か。ビビって損したぜ。
本丸跡には天守台もありました。鬱蒼と生い茂った木々のお陰で雰囲気もあってかっこいいです。
でもこれ登る階段が無いです。石垣を登らせてもらいましょう。
展望台ではないですが、絶景ポイントも。
暗い所もあるだろうと思ってボルト300持ってきて正解でした。あ、落としました、探しました、無事見つかりました。
お城の散策は疲れた身体で登山するようなもの。脚がくがく状態で果たして散策できるのかと不安でしたが、頼みにしていたお城を目前にしてテンションマックス。特に問題無く散策できてよかったです。
まぁ、そこから自転車まで戻るんですけどね。登山は登りより下りの方が大変だと言います。へとへとになりましたが自転車まで戻ります。
あとは麓まで下りです。
来る時は随分苦しんだ道も下りなら楽ちん。
夢創舘へ寄って挨拶して行きたかったのですが、生憎営業時間を過ぎていてしまっていました。鈍足が悔やまれます。
お察しの通りなのですがこの時点で時刻は夕方の五時過ぎでした。
夕飯食べなきゃ。
奈良県のグルメと言えば、
まりお流らーめん。西日本最強の濃厚ラーメン。友人から聞きましたが二十歳の学生四人がそのお店で一番濃厚なのを食べて、その帰りにサービスエリアのトイレに籠城したそうです。
そして、とんまさ。これぞ肉の高取城と言わんばかりに高く積み上げられるカツ。
まりお流は一度言った事があります。ほどほどに濃厚なのを食べて大したことは無かったのですが、リベンジしてみようかな。とんまさも捨てがたいな。
ほう、とんまさはここから(壺阪山駅)24km、まりお流は更に2km先ですか。
とんまさ行くならまりお流も射程圏内ですね。でもとんまさは去年行く予定があったけど時間が無くてあきらめた、という苦い過去があるのでこっちに行ってみたい。
しかし体力的にちょっと苦しい。帰るなら輪行するつもりなので、大和八木駅など乗り換えなしで三重まで行ける駅に行きたい。
大和八木駅まで7,5kmか。軟弱な残り体力でも行けるぞ!
とりあえず大和八木まで行きましょう。その道のり気になるお店があったそこで食べればいいですし。
駅到着。気になるお店はあるようで、特に無かったんだぜ。
でも駅前にもお店はあるわけです。ミスド、美味しそうで雰囲気のいい喫茶店、美味しそうで雰囲気のいい洋食屋さん。どれも興味をそそります。ミスドで買い食いも考えましたがせっかく大和八木まで来たわけですし、いつでも食べられるチェーン店は避けて洋食屋さんに突入しました。
お邪魔したのはマロニエグリルさん。
こじんまりとした店内は清潔感のある落ち着いた内装。渋いです。たまらないです。
メニューもお値打ち。良心的な価格設定の定食。言う事ありません。
ですが、見つけてしまったのです。ちょっぴり高いですが興味を引くメニューを。その名もビーフカツ。とんまさでかつかつとんかつかちきんかつかひれかつかかつかかつ。と呪文のように唱えながら走ってきたのでカツに反応するのは仕方のない事。しかもビーフカツです。もちろん名前は聞いたことありますので、存在は知っています。もちろん三重県にもビーフカツを出してくれるお店はあるのですが(調べてみました)、やはり少ない。カツと言えばとんかつかチキンカツが一般的なのです。そしてお値段も結構お高いのです。
そんなわけでビーフカツは食べた事がありませんでした。興味津々。食べるしかねぇ。
マロニエさんのビーフカツ定食は1400円(だったと思います)。マロニエさんのメニューとしては高い方ですが、ビフカツとしてはお値打ちじゃろっ!?
ということでビーフカツ定食を注文します。
ビーフカツ様の降臨。すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 中のお肉がほどよく生、ステーキみたいです!
早速カツを一口。
うめええええええええええええ!
外の衣はさっくり中、お肉は外側は火が通って香ばしく、内側は野性味あふれるレアでジューシー。
通常、カツと言えば衣と肉の二重奏ですが、ビーフカツは三重奏です。
噛むほどにはじける旨味、肉のパワーがみなぎるこの味。
なんで今まで食べなかったのか。今までの人生は何だったと言うのか。慙愧の念に堪えない思いでいっぱいでござるよ。
前日胃腸の調子が悪く、今日は体調がよくなかったので、カツはちょっと重いかも、と考えていました。ですが食べ始めると問題無くお腹に入って行きましたし、何より美味しい。腹八分で完食。
店の方も親切で、とてもいいお店でした。
食事を終え、後は帰るだけ。
ちょうどいい電車が二十分後に発車するようなので、輪行の準備をします。
使ったのはオーストリッチのL-100。とにかく小さくて軽いのがウリの商品です。リアエンドホルダーがついていないので買い足さなければなりませんが、小さい割に自転車の収納が簡単なので気に入ってます。
輪行バッグとしては、同じくオーストリッチのロード220もお勧めです。こちらはL-100より大きく重いですが、ホイールを入れる中仕切りやエンドホルダー、より自転車が収納しやすいのです。
でもどちらを選んでもいいと思います。お客さんの輪行バッグに自転車を入れる説明をする機会は結構あるのですが、オーストリッチはとても使いやすい。駅前で慣れた様子で輪行している方のバッグを確認してみるとほとんどオーストリッチですし。
無事輪行袋に自転車を入れ、後は電車に乗るだけ。
輪行バッグが有れば安心して遠出できるので行動範囲が広がりますね。
しかし自転車に傷が付くリスクもあります。
何よりピチピチタイツマンで電車に乗るのがあそこまで勇気がいる事だったとは。
自分にも羞恥心と言う物があったことに驚きつつの帰宅となりました。